幸福感について考えてみました!

 今回はファイナンシャルプランナーの立場から幸福感について考える。

 さて、皆さんはどんなときに幸福感を感じるだろうか?

 趣味に興じているとき、家族と過ごしているとき、旅行しているとき、仕事しているときなどなど人それぞれだろう。

 2011年の内閣府の国民生活選好度調査によると以下のような結果であった。

 幸福感を判断する上位3項目は、家計の状況(所得・消費)、健康状況、家族関係であり同等の割合であったと報告している。
 お金の心配がなく、健康で、家族とも良い関係を築けているとなれば幸せそうだと容易に想像できるだろう。
 家計の状況とは「所得・消費」と定義されているが、所得と幸福度にはどのような関係があるのだろうか。

 ここからはファイナンシャルプランナーとして幸福感に影響を与える家計の状況についてもう少し深掘りしてみる。
 
 お金と幸せの関係を考えたときに、給料が良い仕事(職場)に就きたい、給料が安いからこの仕事に先はない、もう少し収入が多ければ…など「収入が多ければ幸せである」という感覚は誰もが漠然と抱いているのでないだろうか。
 前述した調査では、世帯年収と幸福感についても調査している(上図。所得ではなく年収:総支給額である点に留意いただきたい)。
 驚くことに世帯年収400万円から1000万円までは幸福感に大きな差がないという結果であり、「収入が多ければ幸せである」という感覚とは矛盾する結果であった。これについては、「そんなことはない。経済的に余裕がある方が幸せだ」という意見が聞こえてきそうだ。

 それでは、家計の何が幸福感に関与しているのだろうか。

 それは、「貯蓄率」である。

 貯蓄率とは、年間所得に対する年間貯蓄額の割合のことである(年間貯蓄額/年間所得)。そして、この貯蓄率が幸福度と関係しているのだ。

 米メリー銀行が25歳以上の一般人(富裕層ではない)1025人を対象とした調査では、「非常に幸せ」「とても幸せ」と回答した人は、貯蓄額0万円で29%、210万円以下で34%、1055万円以下で42%、1055万円以上で57%と貯蓄額が上がるにつれて幸福だと回答する割合も増加したと報告している。

 一般的に年収が多ければ、貯蓄額も多いはずだと想像することもできるが実際のところはどうだろうか。
 上図は年収と金融資産100万円未満世帯についての調査結果である。

 注目したいのは世帯年収が1200万円を超える世帯でも2人以上世帯では7.6%、さらに単身世帯では25%が金融資産が100万円未満だということである。

 つまり、年収と貯蓄は「別問題」ということであり、貯蓄を増やすためには貯蓄率を上げることが必要だということである。

 これは、冒頭の調査結果にある年収と幸福感の関係性が乏しいことの説明にもなるだろう。年収は多いが貯蓄額が少ないということは貯蓄率はかなり低いということになり、幸福感はさらに低くなるということもあるかもしれない。

 それでは、なぜ年収は多いのに貯蓄ができないのだろうか。

 その背景のひとつに「ライフスタイル・クリープ」がある。
 簡単に言うと、年収が上がるたびに(身につけるものや日用品など高級品を揃えたり、一人での外食にも相当な費用を使うなど)生活水準を引き上げてしまうことである。ライフスタイル・クリープは際限がないためほどほどにしたい。

 一般的に貯蓄を増やすためには「所得を増やす」、「支出を減らす」、「投資リターンを増やす」という方法がある。
 この中で最もコントロールしやすいものはどれだろうか。

 それは、「支出を減らす」である。

 支出を減らすことは、心がけや固定費(保険料や通信費など)の見直しなどで誰でも可能だからだ。
 しかしながら、支出は価値観との関係が強い(先程のライフスタイル・クリープとも繋がる部分である)ため、何もかも節約となると息が詰まる。だからといって放っておくわけにはいかない。
 支出を見直すということは改めて自分(あるいは家族)の価値観(大切にしているもの)を見つめ直すことから始まる。もしかしたら、その行動そのものが家族を想いやることにもなり幸福感へと近づいているのかもしれない。

 「幸福とは、結果(現状)から期待値を差し引いたものである」という言葉がある。
 結果がどうであれ、期待値を超えたときに人は幸せを感じるのである。
 生活レベルを期待値と置き換えてみると、裕福の象徴のような高い生活レベルを追いかけていると幸せからは離れてしまう。逆に、一度でも最低限まで生活レベルを落とすことを経験すると幸せの閾値は下がり幸せを感じやすくなる。

 幸福感には貯蓄「率」が重要である。所得の範囲内で消費し、より多く貯蓄することが経済的な余裕となり幸福感へと繋がると考える。

 世帯年収400万円以上あるが家計への不安を抱いているという方は、幸福への第一歩として支出(価値観)を見直し「身の丈にあった生活」から始めてみてはどうだろうか。


参考資料
内閣府「人々の幸福感と所得について(平成26年)」
https://www.ally.com/do-it-right/trends/new-ally-bank-survey-links-money-to-happiness/
金融広報中央委員会「家計の金融行動における世論調査(2020年)」

L:time (健康的で豊かな人生の実現を支援するファイナンシャルプランナー)

使命は「金融リテラシー向上を推進し、健康的で豊かな人生の実現を支援する」です。 豊かな人生とは、コントロールできる時間や選択肢が多い柔軟性の高い人生を指します。 豊かな人生には「健康」「仕事」「お金」が必要だと考えます。 人生とは時間そのものです。 L:timeのLはLIFEの頭文字であり、人生すなわち時間という意味を込めています。 皆様の豊かな時間を実現できるお手伝いができればと思っております。

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